災害予防/阪神・淡路大震災に学ぶ

過去の地震を調べて対応できる備えが先決

平成25年4月掲載

地震と断層

阪神・淡路大震災で問題になり、いま再び、「活断層」が脚光を浴びています。阪神・淡路大震災を調査された地震地質学の専門家・角田史雄埼玉大学名誉教授の話では「過去に地層と岩盤を切った断層の多くは、固まってしまって動いていない。しかし、およそ100万年前から今までに動いた証拠のあるのが「活断層」です。45億年という長い地球の歴史の中では、ごく最近の変動ということになり、活断層のなかには、これからも動く可能性が高いものはあるようです。

「神戸の震災を引き起こした地震は、有名な六甲山の麓の活断層群とは、数キロはなれた所で発生しました。また、有名な活断層・立川断層は、せいぜい、地下数キロしか伸びていません。こういう実態ですから、活断層の地下で、必ず、地震がおこるわけではありません。しかし、2007年の中越沖地震では、活断層ぞいを強い揺れが伝わっていって、原子力発電所を襲ったようです。活断層は、その地下で地震を起こしそうなのか、それとも、揺れをよく伝えそうなのか、あるいは、それらとは関係なさそうなのか、などを、個別によく調べることが大切です。」と角田先生はいいます。

さらに角田先生は、「活断層の調べ方のポイントは、(1)過去の地震と活断層との関係 (2)地震のときの活断層の揺れ方 (3)地下の活断層と地表に現れた地震断層との関係を調べることです」、といっています。

阪神・淡路大震災と東日本大震災との被害の違い

東北の巨大地震では、ユサユサという大揺れが特徴で、ふじみ野市あたりにおける揺れの強さ(震度)は、よろめく程度の震度4から、立っていられない震度5強くらいでした。しかし、神戸の市街地の真下でおこった地震では、体がはねとばされる震度7から、振り回される震度6でした。そして角田先生は大震災の原因や特徴をこう話しています。

「阪神・淡路大震災で、神戸の地下17キロメートルで断層が動いて地震を起こしましたが、地表でのズレは、淡路島だけに現れました。しかし、地面がズレ動かなくても、高速道路が橋脚を壊されて倒れ、ビルが潰される、強い地震動があったのは事実。」

地震断層の真上の地域が、強烈な突き上げ強震動によって大きな被害を出した例は、ユーゴスラビアのスコピエ地震で研究されています。 地震から50キロメートルほど離れた場所でも、斜めに突き上げてくる強震動で、被害を受けます。例えば、慶安2(1649)年に、所沢から朝霞にかけての区域で起こった地震で、川越の当時の町家が700軒も大破しています。また、1923年の関東大震災では、綾瀬川活断層沿いの幅3キロメートルほどのゾーン内でだけ、家がバタバタと壊されました。東京湾北部で問題視されている大地震では、これらの例のような、ある区域だけがひどい被害を受ける、という被害パターンが予想されるので、要注意です。

以上のような、突き上げ強震動は、東日本大震災では、問題になりませんでした。そのために見逃されやすいのが、神戸や淡路島で問題になった、液状化した地盤が移動したり、滑ったりすることです。 この現象は、強烈な突き上げ強震動のあとに発生し、傾いて折れ曲がったビルがたくさんありました。

このような被害が出たところは、いずれも人工地盤。明治時代は田んぼが広がる田園地帯だった神戸も、丘陵地や台地にあった川や池、縄文時代に海だった低地などを埋め立てて造成地をつくった。ひな段造成地などを含めると、神戸や首都圏の街は、人工地盤都市ともいえるまちで、被害は人工地盤に集中しているのです。

ふじみ野市で予想される地震動

過去に起きたマグニチュード(地震の規模)5以上の地震で、ふじみ野市に最も近い場所で起きたのは、昭和43年に東松山周辺で起きたマグニチュード6.1の埼玉県中部地震です。次に近いのが昭和6年に寄居付近で起きたマグニチュード7.0の西埼玉地震、安政2年に荒川河口で起きたマグニチュード6.9の江戸地震です。

「宇佐美 龍夫氏の著書『資料日本被害地震総攪』などで判断すると、ふじみ野市はこれらの地震で震度(揺れの大きさ)が5(強震)から6(烈震)程度の揺れに見舞われたと考えられる。震源に近い地震では一般的に最初に突き上げられるような強い地震動がくる。当時のふじみ野市では、台地部でカタカタという速くて強い地震動、低地部ではユサユサという大きな揺れが起きたはず。一方、震源の遠い大きな地震では、断層の真上では強く突き上げる地震動があったあと、ヨコ揺れが続く。やわらかい地盤の低地では、次第に揺れが大きくなって立っていられない。多くの関東地震の報告で、こうした揺れの特徴がわかる」と角田先生はいいます。

では、大地震のとき、ふじみ野市の予想震度はどのくらいでしょうか。

埼玉県の試算では、南側でマグニチュード7から8クラスの地震が起きたときは震度5から6、北側でマグニチュード7クラスの地震が起きたときは震度4から5、東側でマグニチュード7クラスの地震が起きたときは震度5から6で、台地にくらべて低地の震度が大きく出ています。

ふじみ野市で予想される震害

ふじみ野市から10から20キロくらいしか離れていない近い区域で、大きな地震が起きたときはどうなるのでしょうか。

角田先生の話では、「激しい突き上げ強震動があり、すべての建物は上に放り上げられたあとに落下するような動きをする。このときに建物自体の重さが加わり、ビルなどの重い建物は、大きな力がかかる下のほうの階が壊れやすくなる」ということです。

阪神・淡路大震災でも、このような強い突き上げ地震動が震源から10キロ以内の神戸市や淡路島北部で観測され、この強振動による被害が目立ったそうです。

震害への対策

これまでの調査では、「台地や低地といった地形・地質の違いによる被害の程度には差はなかったが、土台や壁の強度を計算どおりに造った家屋は被害が軽かったといえる」と角田先生はいい、次のようなアドバイスをしてくれました。

「低地の軟弱地盤や人工造成地などでは、多少にかかわらず土壌の液状化現象が予想される。このようなところでは、ガスや上下水道、電気などのライフラインの補強や、家の敷地内の盛り土、敷地を囲むような壁などの強化をする必要がある。また、傾斜地のひな壇状に建つ家では、宅地内の盛り土が液状化して、土止めのよう壁が張り出す、などの被害も予想されます。実際に、神戸の震災で、芦屋市では、こうした被害例がたくさんありました。
ふじみ野市からやや離れたところで起きる大地震に備え、このような対策をしておくべきだが、特に、低地での大揺れや、台地での速くて強い地震動への対策を重視すべき」と。

地震はなぜ起きるのか

埼玉大学名誉教授角田 史雄

リンゴは、古くなるとしぼんで小さくなり、皮がしわくちゃになります。

地球も冷えて小さくなり、地球の表面は凸凹(デコボコ)になり、山の地層もしわのように褶曲(しゅうきょく)します。「地層は横から圧縮されると褶曲をつくるから、地球の表面近くではいつも水平の力が働き、地震を起すのもそうした水平の圧縮力だ」という考えが、つい50年前ごろまでの世界の常識でした。

これが現在では、「地球はプレートという広大な岩盤に覆われ、プレートはつねに地球内部でつくり出されてくる。たとえば、太平洋の真ん中でつくり出されるプレートは、あとから生産されるプレートに押されて日本やアメリカ大陸の方に移動し、ついには、それらの下に沈み込んでいく。このときの無理な沈み込みが、まわりの岩盤との摩擦と、それによる破壊を生じさせ、地震を起す」というプレート説」が、世界の常識といわれています。

この常識に従って建てた防波堤や原子炉などの重要施設は、3万発以上の原爆がいっぺんに爆発したのと同じエネルギーをもった、マグニチュード9.0の巨大地震に、あっと言う間に壊されてしまいました。 また、どこでもこの説に従って地震の予知に成功した例はなく、プレートが本当に動いているのか否かも測定され始めたばかりです。また、地下100キロ以深でのプレートの年齢測定、地下12キロ以深の岩石資料の採取にも人類はまだ成功していません。

この巨大地震を契機にして、いま、この定説の見直しと、新しい説の模索が始まった、といっても過言ではないでしょう。また、地震という相手のこともよく分からない段階では、被害を防げるはずもないので、「防災」よりは「被害を軽くする減災」が現実的のように思われます。 地震の「癖」を知り、先人の知恵を学んで、自然条件を活かす方法を考え、人の輪をつくって、「減災」に取り組むのが良いでしょう

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更新日:2020年03月02日